本をよんでいて、ふと思います。
書かれていることは、見えていることは、ほんの一部。伝えようとする誰かのまとめ方によって、伝えようとするものは絞り込まれ、受け止め方と理解力によって、さらに伝わることはその一部に限られます。
人生のうちの二十年分を原稿用紙1枚にまとめようとすれば、全てを書き切ることができません。
自ずと、全体のうちから、伝えたい一部を切り取ることになります。
もし、「日々のしあわせ」をテーマにしたなら、二十年のうちの、特段変わったことのないある日を取り上げて、その穏やかな時間を書くでしょう。
「忘れられない悲しい出来事」を伝えようとすれば、そんなことがあったなんて、と涙を拭うような内容を取り上げるでしょう。
「誰かに伝えたい感謝の気持ち」を一番にしたいとなれば、現在にいたる経過でどれほど助けられたとか、おかげさまで今があると言った、いまに近い状況を伝えることになるでしょう。
どんなに多くの言葉や文章、画像や映像をもってしても、できごとの全容を誰かが誰かに伝えることはできません。それでも、何かを伝えたい、わかりたいとおもって、誰しも物語や情報を共有するんです。
そんなときに、少しでもその伝わる重なりが多い方がいいと思えば、想像力が欠かせなくて、それは日頃から、目減りしないように努めていないとならないことだと思うのです。